天然のシトリンは極めて希少である。市場に流通する多くは、アメジストを加熱処理し、黄色へと変化させたものである。約300℃前後の加熱により、紫色の原因となる鉄イオンが酸化し、黄色へと転じる。
天然シトリンの産地はブラジル、マダガスカル、スペインなどに限られる。特にスペイン・サラマンカ近郊では、中世より採掘が行われてきた歴史がある。名称はフランス語の「citron(レモン)」に由来するが、天然の色調はレモンよりも深く、蜂蜜を透過する光に近い。
中世ヨーロッパの商人たちは、これを「商売の石」として金庫に収めていたという。価値の差は希少性そのものよりも、天然か加熱処理かという生成過程の違いに宿る——そこには、人間の価値基準がそのまま投影されている。